Day1で、大人の疳の虫は自律神経の誤作動だとお伝えしました。今日はもう一歩踏み込んで、なぜ自律神経が暴走してしまうのか、その仕組みを見ていきます。
少しだけ専門的な話になりますが、自分の体で何が起きているかを知ることは、「得体の知れない不安」を「わかっている問題」に変える大きな一歩です。
脳の奥深くに「視床下部」という場所があります。アーモンドほどの小さな場所ですが、二つの大きな仕事があります。
一つ目は、自律神経の司令塔。心臓の動き、体温の調節、汗の量、消化——普段意識しなくても勝手に動いてくれている体の機能は、すべてここがコントロールしています。
二つ目は、ホルモンの管理係。全身のホルモンバランスを見張って、必要に応じて指令を出す、いわば「ホルモンの交通整理」をしている場所でもあります。
40代を過ぎると、女性はエストロゲン、男性はテストステロンといった性ホルモンの分泌が少しずつ減り始めます。
ふだんは、このホルモンが血液を通じて視床下部に「大丈夫だよ」という信号を送り、自律神経を安定させてくれています。ところがホルモンが急に減ると、視床下部は「大変だ!ホルモンが足りない!」とパニックを起こして、「もっと出せ!」という指令を出し続けてしまいます。
視床下部の中では、ホルモンの管理係と自律神経の司令塔が、壁一枚で隣り合っています。ホルモン管理係がパニックになると、その興奮が隣の自律神経の部屋にまで漏れ出してしまうのです。
この「情報の漏れ出し」こそが、ホルモンの変動が自律神経の暴走を引き起こす仕組みです。動悸、のぼせ、発汗、めまい——どれも、この「漏れ出し」から生まれています。
この仕組みがわかると、「検査で異常なし」と言われた理由がはっきりします。
心臓を調べても異常は見つかりません。なぜなら、問題は体の部品ではなく、脳の奥にある司令塔で起きているからです。これは普通の血液検査やCTでは映りません。
「自分がおかしいのではなく、脳の中の仕組みの問題なんだ」——そう知ることが、何よりも大事な第一歩です。
この「情報の漏れ出し」は、男女どちらにも起きます。ただし、きっかけとなるホルモンと、症状の出方が少し違います。
男性の場合は、テストステロンがゆるやかに減っていくことが引き金になります。動悸、寝汗、朝の疲労感、集中力の低下、意欲が湧かないといった形で出やすいです。「男性更年期」と呼ばれますが、社会的な認知がまだ低く、「気合が足りない」で片付けられがちです。
女性の場合は、閉経前後にエストロゲンが急激に減ることが引き金になりやすいです。ホットフラッシュ、発汗、イライラ、涙もろさ、不眠といった形で現れることが多いです。
きっかけは違いますが、脳の中で起きている「漏れ出し」という仕組みは共通しています。つまり、対処の方向性も共通する部分があるのです。